修理・修景・許可基準

 伝建地区内において、建造物の外観に関わる増改新築、広告物の設置、樹木の伐採等(日常的な維持管理行為は除く)、町並み景観に少しでも影響を与える行為を行うときには、必ず次の3つのルールのうちのいずれかを守ることが義務付けられています。伝統的建造物の場合は、これを保存あるいは旧状に復するための「修理基準」があり、それ以外の建造物は、豆田町特有の町並みに揃えることを目的とした「修景基準」、もしくは、周囲の歴史的風刺を損なわないための最低限のルールである「許可基準」があります。これらの基準については『日田市豆田町修理・修景の手引き』において詳しく説明していますが、以下でその概要を示しています。

1.修理基準

  伝統的な建物は、増改築や修繕等により本来の姿ではなくなっていることが多いため、市や専門家による履歴調査に基づき旧状に復原することを基本としています。また、必要に応じて構造補強を行う場合は旧状を損なわないように努め、使用できる既存部材はできる限り保存活用します。

2.修景基準(補助対象)

 

建築物

(屋根・下屋庇)
・妻入りの場合は寄棟造・入母屋造のいずれかとします
・平入りの場合は寄棟造・切妻造のいずれかとします
・軒の出・軒高・勾配は周囲の伝統的建造物に則ったものとします
・妻入りの場合、立地場所により梁間は3間又は4間以下とします
・瓦は黒色又は灰色の燻瓦とします
・原則、樋は銅製とします
・接道する場合、下屋庇は正面間口一杯に設けます

(構造・階数)
・従来工法による木造とします
 (伝統様式に従う造作意匠は伝統工法とします)
・間口・高さは周囲の伝統的建造物に則ったものとします
・原則、2階建とします(接道しない場合は1階も可)

(外観デザイン)
・居蔵造・真壁造・土蔵造のいずれかとします
・8種類の「伝統様式」(『日田市豆田町修理・修景の手引き』参照)から、立地場所や所有者の意向により選択します

(敷地)
・敷地の履歴を調査の上、建築物を配置します
・建物が建たない道路境界には塀や門を配置します
・地盤高・基礎高を周囲の伝統的建造物に揃えます
(色彩)
・木部は、生地色を生かした仕上または古色仕上とします

 

工作物・環境物件等

工作物等 ・在来工法による薬医門、腕木門、石柱門のいずれかとします
・在来工法による屋根付板塀又は土塀とします
石積・石段・石垣 ・在来工法による石積・石段・石垣とします
屋外広告物 ・建築物本体の外観に則った規模、構造、材料、色彩とし、自家用広告以外は
 設置することができません
・屋根上には設置することができません(1階屋根庇上は可)
環境物件 生垣・庭園・樹木 ・従来種を用いるものとします
その他 車庫・駐車場 ・駐車場の道路境界には修景基準に従った塀を設けるものとします
・屋根付駐車場は建築物の修景基準に従うものとします
建築設備・自動販売機 ・許可基準に従うものとします(許可基準参照) 補助対象外
環境美化設備 ・歴史的風致を損なわないものとし、規模、材料、色彩を周囲の伝統的建造物に
 則ったものとします
土地の形状の変更 ・許可基準に従うものとします(許可基準参照) 補助対象外
木竹の伐採・植栽 ・許可基準に従うものとします(許可基準参照) 補助対象外
土石類の採取 ・許可基準に従うものとします(許可基準参照) 補助対象外

 

3.許可基準(補助対象外)

建築物

(屋根下屋庇)
・軒の出・軒高・勾配を周囲の伝統的建造物と調和したものとします
・原則、黒色又は灰色の和瓦葺とします
・接道する場合、下屋庇は正面間口一杯に設けます。

(構造・階数)
・原則、在来工法による木造工法とします
・間口・高さを周囲の伝統的建造物と調和したものとします
・原則、2階建てとします(正面が接道しない場合は1階も可)

(外観デザイン)
・周囲の伝統的建造物と調和したものとします

(敷地)
・町並み壁面線に沿った配置とします
・敷地の履歴を調査の上、建築物を配置します
・建物が建たない道路境界には塀や門を配置します
・地盤高・基礎高を周囲の伝統的建造物に揃えます
(色彩)
・歴史的風致と調和したものとします

 工作物・環境物件等

工作物等 門・塀・石積・
石段・石垣
・周囲の伝統的建造物と調和したものとします
屋外広告物 ・歴史的風致を損なわないものとし、自家用広告以外は設置しないものとします
・屋根上には設置しないものとします(1階屋根庇上は可)
環境要素 生垣・庭園・樹木 ・歴史的風致を損なわないものとします
その他 車庫・駐車場 ・駐車場の道路境界には塀及び門を設けるものとします
・屋根付駐車場は建築物の許可基準又は修景基準に従うものとします
建築設備 ・原則、公共の場から見える位置には設置しないものとします
自動販売機・
環境美化設備
・歴史的風致を損なわないものとします
土地の形質の変更 ・変更後の状態が歴史的風致を損なわないものとします
・空地が生じた場合は、歴史的風致を損なわないよう管理運用を図るものとします
木竹の伐採・植栽 ・歴史的風致を形成する木竹の保存に努めるものとします
・空地や法面などは、歴史的風致を損なわないように緑化に努めるものとします
土石類の採取 ・採取後の状態が歴史的風致を損なわないものとします

 

4.用語の解説

■「建造物」「建築物」「工作物」
 「建造物」とは、住宅、店舗、倉庫、寺社のお堂や社などのいわゆる「建築物」 と、門、塀、石橋等の「工作物」をすべて含んだ総称です。
 「建造物」=「建築物」+「工作物」
■「修理」/「修景」/「復旧」
 伝統的建造物を、履歴調査に基づいて然るべき時代の姿にもどすことを「復原」と呼び、そうするための行為を「修理」と呼びます。それに対して、伝統的建造物以外のもの、すなわちおおむね戦後に建てられた建造物を、周囲の歴史的風致と調和するように配慮して増改新築する行為を「修景」と呼びます。また、樹木や庭園をもとの姿に戻すことを「復旧」と呼びます。
■「建築設備」
 エアコン室外機、電気、ガスメーター、ソーラーシステムの設備などを指します。
■「町並み壁面線」
 伝統的建造物の主屋2階壁面がつくり出す壁面線のことを指します。

■「居蔵造」
 柱や軒裏の木部を土や漆喰で塗り込めたもので、九州及び山口県における特有の呼び方です。
■「真壁造」
 柱や軒裏の木部を塗り込めないものです。